感性のサプリメント

  パナソニックがこういう製品を出していたとは知らなかった。USBパワーコンディショナーSH-UPX01 。ネットの散策中に出会った。USBで電源を整える? 一体どういうことだろう。ウェブの製品紹介には具体的な効能や機能の説明がなく、単に高品質部品を使っているというだけ。サプリメントの効能書きに似ている。関連記事を見て回ると、どうやら機器のUSB接続口に繋げるだけで電源起因のノイズを抑制するもの、らしい。やはりよく分からない。

 しかし、気になる。アンプ DEP1000(Devialet Expert 1000 Proのこと)がフランスから戻り、それが奏でる妙音を聞き続けているが、どこか不満があり、改善の余地というか、伸びしろがまだありそうな気がする。どこまでも澄み切った、伸び伸びとした透明感が欲しい。そこで、よくはわからないが、ダメ元でこれを試してみたくなり、購入した。

 Roon Coreを載せている M1 MacBook Air に接続した。アンプとスピーカのオーディオセットからは空間的には8mも離れ、物理的な繋がりはマンション壁内埋め込みの電源線とLANケーブルだけである。もしなにか影響を与えるとすれば、殆どオカルトではないか。

 ところが、これがなんとも嬉しい見込み違いだった。確かに、DEP1000 の音がさらに冴え渡り、透明感、立体感、躍動感を増した。たとえば、つい最近手に入れたこのJean Rondeauのアルバム(冴えないアートワークだが、ハイレゾダウンロードがCDより安いのが嬉しく、購入した。演奏も録音もよい)。


 チェンバロの繊細さはもちろん、重厚感、立体感、躍動感が十分すぎるくらい克明に、生々しく描写される。他にいくつものアルバムを聴き直し、使用、非使用で聞き比べてみたが、第一印象通りだった。

 パソコン電源に起因するノイズはやはり侮れないようだ。スイッチングレギュレータを使ったRaspberry Pi に使用して効果を上げたという記事もある。

 パソコンとアンプとの情報のやりとりは、コード理論と幾重ものバッファにより保護されたディジタル通信の世界だから、電源起因ノイズがデータ的にはもちろん時間要素にも影響することはあり得ない。すると、電源ラインあるいはLANケーブルを通じてか、電磁波としてか、なんらかのEMI現象によるアナログ的作用しか考えられない。パソコンで、電源入力をオンにしてバッテリ駆動でない状態にすると、音が硬くなるという現象は、このパワーコンディショナーを接続しても変わらない。そこで、試聴時、パソコンの電源接続は切っている。ということは電源ラインでの繋がりはないから、ノイズ影響の残る可能性はLANケーブル経由か、あるいは電磁波か。ちゃんとした測定器がなければこれ以上の犯人捜しは無理だ。それはともかく、我がシステム(と耳)にとってこのパワコンは効き目があることは確かだ。

 DEP1000本体にもUSB接続の口があり、空いているから試すことは可能だが、していない。ノイズ抑制よりも音色に影響することを恐れるからでもあるが、すでにCAD GC1という強力な(何十倍もの高価な(^_^))ノイズキャンセラーを使っていて、然るべき効果を上げている「何処までも無垢な音を求めて...CAD GC1, iPurifier, そしてMQA」。今回、試しにこれを外してみたところ、音の劣化がはっきり感じられ、その効果に改めて感心した。

 上記引用の記事で触れたiFiのAC iPurifierも電源ノイズ除去のアクセサリとして似ているが、機器に直接接続するものではない。これはしかし、後に悪い副作用を感じて止めた(「再び問うアクセサリのYAGNI」)。このパワーコンディショナーも、数年後には抜き差しし、初心を持って改めて試聴することになるかも知れない。果たしてどうなるか。本物か、それともプラセボか。要は、いい音が聞けるという気分が重要なので、あまり気にしないことにしている。感性のサプリメントだと割り切って、心ゆくまで妙なる楽音を楽しもう。
 

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