どこまでも無垢な音を求めて...CAD GC1, iPurifier, そしてMQA

 体調不具合もあり,すっかりご無沙汰してしまったが,じつはこの間も,システム改善をいくつか行った.

 4月にComputer Audio Decision社のGC1を購入,組み込んだ.主としてディジタル機器が引き起こし,グラウンドラインに載る超高周波ノイズを吸収するという.最初パソコンに接続したところ,さしたる効果は聴けず,Devialet Premier 800アンプのマスターに接続しなおした.これは効果覿面,音空間を水槽に見立てると,うっすら濁っていた水が澄み切り,薄汚れたガラスの壁面が無いに等しいかのようになった.Premierスレーブにも追加したいところだが,高価なので見送っている.


CAD GC1(アンプ置き台の間にある黒い物体)

 9月,iFi-Audio社のiPurifier 3/Bを購入,セットした.USB信号に関わる様々な信号劣化要因を排除し,純化するというもの.以前から気に掛けていたが,最近バージョンアップされたのを知り,使って見ることにした.もともと使用しているUSBケーブル(AIM SHIELDIO UA3 R010)が十分高品質なためか,それといった改善効果は私の耳には聞き取れないが,悪影響もなさそうで,そのまま使っている.


iPurifier 3/B

 同月,友人からMQAについて訊かれ,以前から名前くらいは知ってはいたものの,改めて調べ直した.伝送速度の限られたストリーミングのためのデータ圧縮方式くらいに思い,TIDALがいまだ使えない状況では縁ない存在だと見なしていた.しかし,調べ直すと,いま使用しているRoon1.5にMQAのソフトウェアデコーダが入っていることを知り,また,MQA開発者の詳しい解説を読み,大いに共感させられるものがあり,試すことにした.まず 2L Music Store test benchからサンプルをダウンロードして試聴した.ハイレゾ版などとの相互比較が容易に出来るすぐれたテストベンチだ.時間領域での分解能が高く,音のにじみがないというMQAの言い分は本物だと実感できた.音の立ち上がり,立ち下がりの切れ味が極めてよい.多分そのせいで,左右スピーカからの音の位相がある空間位置でぴったり合い,空間の分解能を高くしている,こうして,焦点が隅々まで合ったサウンドイメージが形成される.カットグラスに例えれば,なまくらな安物と違って手を触れれば切れるかのようなボヘミンアングラスのようだ.ピアノの高音は磨き上げられて輝かしく(Hoff EnsembleのPolarity),ソプラノは艶々しく軽やかに伸びる(The New Sound of Maria Callas).バイオリンは心の奥の秘めた痛みもさらけ出す(Kyung Wha ChungのBach: Sonatas & Partitas).

 ハイレゾ音源のMQA化はもともと高い時空間分解能をさらにあげ,透明度を高めるが,MQA-CDでは,CDDAをハイレゾ領域に広げるから,効果はより顕著となる.ただし,現在の拙システムでのMQA-CDには問題がある.まず,MQA化されていないトラックを含むCDアルバムが多い〔下図参照).RoonのMQA検知プログラムのミスなのかもしれない.さらに悪いことに,しばしば音切れが起こる.トラックの最後の方で突然止まって次のトラックに行くことがある.Roonでのソフトによるデコーディングが間に合わずバッファ切れになるためかも知れない.ファームウェアのデコーダを持つDACを使えば生じない現象かも知れないが,拙システムとしては困った問題だ.リッピングは関係ないと思うが,XLDで行っている.



MQAが検知されないトラック(Roon画面より〕



MQAが検知されたトラック(Roon画面より〕



 10月,eBayで注文した2台のiFi-Audio社のiPurifier ACが届いた.eBayを使ったのは,国内より大分安かったからだが,届くまで10日掛かった.届いた後,一苦労あり,わずかに大きすぎて,壁のアウトレットにアンプの電源ケーブルと並べて挿入できない.幸い,ネットで珍しい電源アウトレットアダプタを見つけ,それに取り付けた.結果,下図のように,アンプの電源ケーブルとおなじアウトレットにセットできた.この電源アダプタは安いけれどしっかりしている.


iPurifier ACと電源アウトレット


 前述のCAD GC1は,システム内部でグラウンドに排出される超高周波ノイズを除去,吸収するのに対し,iPurifier ACは外部からAC電源に入り込むノイズを逆位相によるノイズキャンセラーで消去する,というもの(さきのiPurifier 3もUSBしんごうにたいこの機能を含む〕.レーダ照射を吸収するステルスの技術を使っているというのだが,この値段で,この大きさで,ほとんど信じがたい製品だ.効果はあり,さらに音空間の透明度と音の純粋化が増した.GC1導入後でも幽かに濁りというか,淀みのようなものが感じられ,GC1をもう一台追加するかどうか迷っていたが,その淀みはこのiPurifier ACでぬぐえたと思う.MQA化の効果もよりはっきりわかるようになった.

 CAD DC1はノイズというゴミを排水溝に流し去るのに対し,iPurifier ACは入り口でゴミを除去する浄水器,とでも言おうか.

 音の記憶はあやふやだが,これらの対策で我がオーディオシステム μJPS は以前より確実に進化したと思う.耳に聞こえる雑音はもちろんのこと,歪み,詰まり,淀み,濁り,滲み,といったものがほとんど感じられない.といって,決して清潔一点張りの消極的で無味乾燥なものではなく,弾力と勢いのある生々しさを持つ.そして音の背景が透明でもやつくことがない.Devialet Premier 800とSonus Faber Serafinoの組み合わせが持つ本来の力を引き出したまで,というべきか.

 何はともあれ,何事も進化が感じられるのはうれしいことで,そのためかどうか,体調もやっともとに戻りつつある.

コメント

人気の投稿