今のままではいただけないApple Music

Itunes12.2に始まったApple Musicをいろいろ試してみたが,率直に言って,いまのままでは欠陥が多すぎる.

まず第一に,お節介が過ぎる.個人(またはファミリ)所有のパソコンやiPhone, iPadなどの各種デバイスに置いているミュージックライブラリを総合的に管理する仕組みを提供する,という(Appleらしい)サービス精神から作られたらしいが,それが実はトラブルのもとになっている.それぞれのデバイスは大きさ,重さが違うから,ユーザからすればそれぞれの使用目的は当然異なる.たしかに,予定表などは統一されることが必要だし,じっさい役立っているが,音楽の場合,無理にデータを統一化,同一化する必要はないはずだ.少なくとも小生の場合,パソコンは,オーディオ装置に接続して高品質の音楽を聴くためのものだし,スマホでは外出先でイヤホンで聴く(それも滅多にない)くらいだから,当然,楽曲も要求する品質も全く同じに共通化したいとは思わない.

Apple Musicは,統一化を自動化するために,共通ミュージックライブラリを置く場所としてiCloudを使用する.そのため,iTunesのデフォールトでは,「iCloudライブラリを利用する」設定になっている,そのままiTunesを使うと,パソコン内のミュージックライブラリのうち,Apple Musicライブラリにあると見なされるものはそれがiColudにはいり,Apple Musicライブラリにないと見なされた曲はすべて猛烈な勢いでアップロードされる.Apple Musicライブラリの曲が気に入ってMy Musicに移そうとするとまずはiCloudに入る.

この状態でもともと自分の手元のパソコンにあった高品質の曲を,(統一化の恩恵を受けるべく?)Apple Musicの曲として聴くならば ,iCloudから低品質の曲がストリーミングで流されることになり,2重の意味で品質が劣化する.これでは一体なんのための統一化だろう.

先日,Apple Music(ライブラリにある曲)の品質がどれだけのものか評価しようとして,Donald Fagenの例のThe NighflyをApple Musicライブラリから自分のMacへダウンロードして聴いてみようとした.すると,前述のようにまずiCloudに入り,それをMacへダウンロードする,という手順になるのだが,ここで,エラーが生じ,なんと,iCloudからダウンロード出来ない.それだけでなく,自分のMacのライブラリも壊れて,ファイルのありかが分からない,というエラーメッセージが出る.恐ろしいことに,ちょっとした手違いで,せっせと蓄えてきた膨大な自分のライブラリが破壊される?.この種の不満と苦情がAppleのSupportサイトに溢れていて,私と同じ苦悩を抱えた人が非常に多いらしい.私の場合,iCloudライブラリの使用を止め,iTunesのミュージックライブラリファイルをもとに戻すことで,被害を最小限に押さえたつもりだが,The Nightflyの数曲はあいかわらずミュージックデータ本体のファイルへのリンクが壊されていて,それを手で修復することになった(推測だが,iTunes Music Library.xmlというxmlファイルも治さなければならないのかもしれない.そこまで深入りするつもりはないが...).こんな具合では,今後もずっと「iCloudを利用しない』設定にしていこうと思う.なんのことはない.これで,Apple Musicの仕組みの肝が意味を失うことになる.

Apple Musicライブラリでの検索も,いまのところ,おかしい.Artist名での検索はかなりきちんと拾ってくれるが,アルバム名や作曲者名での検索はしばしば失敗して,あるはずのものが見つけられない.検索エンジンの高性能化に慣れ親しんでいる現在,非常にいらいらさせられる欠陥だ.

肝心の音質だが,ストリーミングというより,AACフォーマットによる限界を感じた.自分のMacのライブラリにあるAIFF版のものと比較試聴したが,音響空間の彫りが浅くて鈍い.また,リズムの躍動感と音色の微妙なニュアンスがどこか物足りない.MP3よりは確かに良いが,やはり感性圧縮方式には限界があるようだ.しかし,音量を下げていれば長時間聴いていても不快感が増すような雑味はないのは救いだ.

最初に,統一化はお節介だ,と述べたが,iCloudになにもかも入れてしまう,という統一化がおかしいので,iTunesの画面構成で,手元のライブラリとApple Musicのライブラリ,それにRadioを一望の下でアクセスできるのは便利だ.RadioをBGMで聞き,耳に残る曲があれば,それをApple Musicからストリーミングで聞き直し,さらに気に入れば,そのもとのCDかファイルを別なサイトから探して自分のライブラリに入れる,という手順をこれから繰り返すことになるかもしれない.

結局,ものの価値をその「所有」ではなく「使用」に置くべきだ,という,若き日の我が夢想の現実化はまだ先の話になりそうだ.

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