Devialet Firmware 7.1.0...新たないただきへ

5月15日に約束通りDevialet社から新バージョンのFirmware 7.1.0とDevialet AIR 2.1.2がレリースされた.早速取り込み,以来,ずっと試聴を続けている.いまのところ,これまで悩まされてきたバグと思わしきものの現象はあらわれない.WiFi, ETH,USB入力のいずれにおいても,突然死,ドロップアウト,だぶり,それに定位の大幅なずれ,などデジタル的なエラーは全く経験していない.おそらく自分のiPhoneからの電波の混入によると思われるノイズがWiFi入力時に若干あった程度である.ただし,WiFiでドロップアウト現象が生じることがあるというネットの投稿もあり,どんな環境でもバグフリーになったかどうかはわからない.

この新ソフトによって,拙システムの場合,マック(MacBook Pro Retina)からDevialet800への次の接続経路が安定して機能するものとなった.

(1)ETH:     → LANケーブル → ルータ → LANケーブル →            
    WiFi:     → LANケーブル → ルータ → WiFi  →            
(2)LAN直結:   → LANケーブル →                                                  
    WiFi  ad hoc: → WiFi  →                                                  
(3)USB:     → USBケーブル →                                                    

ルータはAtermWG1800HP,LANケーブルはクラス7の通常のもの,USBケーブルは(気張ってあらたに購入した)Kripton UC-HR(2m)を使用している.ルータを介する(1)の方式ではiTunesの出力データはDevialet AIRアプリを経由してストリーミングされ,パソコンの出力サウンドデータとなるが,それ以外ではiTunesの出力データが直接パソコンの出力サウンドデータとなる.

この新ソフトを入れる前の試聴で,長さ5mの無名のUSBケーブルにかえて,上記KriptonのUSBケーブルを試したところ,格段によいことがわかった.USB規約では5mより長いケーブルは想定しないことから,音質劣化を考えれば敢えて長尺のUSBは使いたくない.そのため,短尺のUSBケーブルを使うことにすると,マックをアンプのすぐそばにおかざるを得ず,当然,選曲などの操作性が悪くなる.そこで,iPhoneないし別のマックで遠隔操作することを考える.すると,アンプにつないだプレイ用マックが何らかの形でローカルネットにつながっている必要があるが,(2)ではそれができない.そのため,拙システムでは(2)はすくなくとも当面は試みないことにした.

iTunesを遠隔操作するものとして,iPhoneの「Remote」アプリがある.これは音質劣化も起こさず,選曲程度ならば十分に機能する.実際,しばらくこれで楽しむことができた.しかし,たとえば,入力方式をいろいろ変更してみる,などということは出来ない.そこで,MacBook AIRをあらたにシステムに導入し,これを手元において,プレイ用MacBook PROを遠隔操作をすることにした.マック間の共有機能のひとつである「画面共有」設定を使えば,iTunesの操作だけでなく,ほとんど何でも出来てしまう.たとえば,Audirvanaの使用やその設定変更なども容易だ.しかも,制御だけで音楽データとその処理には全く関与しないから,原理的に音質劣化につながらないはずだ.もしわずかでも心配ならば,リモコン用MacBookAIR側で「画面共有」を終了してしまえばよい.また,iTunesにあらたにミュージックファイルを追加したい場合には,ファイル共有の接続状態でプレイ用MacBookPROにあるiTunesをリモコン用MacBookAIRで開いて,そこにファイルを読み込めばよい.

リモコン用MacBookAirは5GHzのWiFi帯域で,プレイ用MacBookPROはLANケーブルでルータに接続している.WiFi接続方式時のアンプとプレイ用マックとは2.4GHz帯域を使用するから,こうしてWiFi接続時でのチャネルの錯綜を避けている.プレイ用マックとルータとのLANケーブル接続は2.4GHzでの錯綜回避とプレイ用マックからのミュージックデータの送信の高速化だけでなく,「画像共有」の高速化に貢献し,これにより,リモコン用マック上で表示されるプレイ用マック画面のスクロールなどがほとんど違和感なく自然に行えるようになっている(この種の機能のソフトは昔からあったが,動作が遅くてぎこちなく,あまり使う気になれなかった.今更ながらIT技術の進歩に感謝).

いま,プレイ用MacBookPROのミュージックファイルをプレイしながら,リモコン用MacBookAIRのChromeで,このブログを書いている.まったくストレスがなく,快適だ.

さて,このような設定での試聴でわかったこと...やはりよく出来た短尺のUSBケーブル接続に軍配を上げたい.とくに,力強いリアリティが他の方式を上回っている.新ソフトでは,WiFi, ETHともに従前のものに比べ音質の向上を感じたが,USBにはかなわない(ように思う).他のユーザによる接続方式の比較論議は,たとえばこのサイトが参考になる.違いが認められるにしてもその差は小さい,というのが,私を含む大方の感想だろう.高級料理やワインの比較論議と同様で,結局,自分の感性の良さを言葉の形容だけで互いに競いあうようなところがある(カミサんによるブラインドテストが一番信頼できる,という投稿があったが,正直で,あんがい卓見かも).

理屈(科学?)の上で考えてみても,構成がもっとも単純なUSBがよいはずだ.ただし,ケーブルによって伝搬されるアナログ的な電磁ノイズや電源変動,あるいは微振動によるマイクロフォン効果など,アンプのアナログ性能に影響するかもしれない伝統的なケーブル問題にきちんとした対処がなされていることが肝要である.これらのケーブル問題を根本から避けるため,という理由で,最初のDevialetアンプでは,無線(WiFi)方式だけが導入され,いわば常識はずれのUSB接続なしにしたはずなのだ.しかし,実際は,無線は無線の問題を抱えていて,それがこれまでのDevialetアンプの宿痾になってきた.結局,有線のUSBがよいというのは,この最初の独創的意気込みに対する皮肉な結果なのかもしれない.

いずれの接続方式でも長時間プレイしてフリーメモリが少なくなると,音質劣化を感じる.その程度は接続方式での優劣の差異を超えるものだ.この劣化を感じたとき,プレイ用マックを再起動する.これもリモコン用マックでの「画面共有」での遠隔操作で可能だ.再起動すると,たしかにふたたびフレッシュな音質に戻る.明確な理由はわからない.

Audirvanaの使用もいろいろ試してみた.しかし,現在の拙システムではどうも感心しない.それにメモリの食い方が甚だしく,フリーメモリがたちまち(といっても数時間後)わずかになってしまう.アップサンプリングも,リアリティの力強さを弱めるように感じた.そのため,いまはあまり使っていない.

これまでひどい録音と見なしてきたCDの音が意外によく聞こえるようになった.たとえば,1928年録音のコクトー,チボー,カザルスによるベートーベン「大公」など,プチプチノイズはもちろんあるものの,眼前に広がる演奏の生々しさ,逞しさに圧倒される.100円ショップのCDでさえ,もともとの録音のよさが出るのか,十分に音楽性を楽しめる.それに引き換え,ステレオサウンドによる最近発売のCD-R版「川の流れのように」の録音のなんとお粗末なこと.ひばりの声にはエコーがかかりすぎるし,伴奏のこれ見よがしの押し出し方は安直すぎる.再生装置がよくなるほどに録音技術者の音楽的センスというか,気の入れ方が露骨に現れるのだろう.

Devialetのアンプを使いだしてこのかた,これ以上の音質向上はあり得ないだろう,と感じるステップアップが何度かあった.ありがたいことに今回も同じ思いにとらわれる.しかし,しばらく聴き続けるうちに,もっと良い音があり得るのではないか,というある種の欲求不満が生まれるのがこれまでの常だった.1mmでもよいから更なる高みに上りたい,というピュアオーディオ屋のピュアな,というか,あざといというべきか,欲求が生じるのだ.いま考えられる次のステップアップはDevialetのSAM(Speaker Active Matching)対象スピーカとしてHB-1を入れてもらうことである.さて,いつになることか.

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