WiFiルータを替えた

昨年,Devialetソフトウェアのバージョンアップがあり,ファームウェアは6.0.10,Devialet AIRは2.1.1になった.しばらくぶりの更新で期待し,確かに改善が見られたが,それでも例の病いは完治したわけではなく,数時間も連続演奏すると,WiFiストリーミングの接続が瞬間的に切れたり途絶したりする.その際,Macのシステムログに,Devialet AIRからの"Feedback timed out"などのメッセージが残される.

新バージョンでのAdhocモードも試してみた.ストリーミングの経路からルータを省き,アンプとパソコンを直結するのだから,このほうが当然よいのでは,と考えられるが,実際は,接続の安定度以前の問題があり,ブチブチというノイズの混入が多くなってしまう.パソコンで走るほかの多数のプロセスがストリーミングプロセスを中断するため,そのタイミングを乱してしまうのだろう.コンピュータ処理では,基本的にデータの流れの順番だけが重要で,データ間の時間間隔など,実時間性はあまり考えられないのだ.ルータは,間に入って時間の乱れを緩衝しているようだ.

そこで,ルータに注目してみた.これまで使用してきたApple TimeCapsuleの代わりに,しばらく前に買っておいたNECのAterm WG1800HPを試すことにした(下図,中段の白箱の後ろにある黒箱).


いまのルータは事実上すべてEthernetルータで,原理的に実時間性を乱しやすいCSMA(Carrier Sense Multiple Access)の処理を行う.TimeCapsuleはその上,NASの処理も含むから,相当な計算負荷がかかっている.それがストリーミングの安定度を落とす原因になっているだろうと考えた.WG1800HPは802.11ac対応で,その高速性が売りだが,アンプもパソコンも11acには非対応で,その点は意義がない.しかし,CPUを二つ持ち,一つをWiFi処理に特化している,というところに期待した.また,電波強度の性能もよさそうだ(実際,Devialet AIRによる表示では -30dBm前後).

このルータの取り替えは功を奏した.ストリーミングが途絶えることはほぼ全くなくなった.数時間どころか,数日間でもノンストップで演奏する.ただし,「ほぼ」であって,まれに止まることがあり,システムログを調べるとやはり Time Out だった.そこで,Devialet AIRの設定で,以前は効果がみられなかったTarget device bufferを最大の5000msに変更した.その結果,いま現在,3日以上の連続演奏が続いている.これならほとんど文句はない.しかも気のせいか,音質がさらに向上したように思われる.電子レンジを使用してもその影響はほとんどない.ルータ,パソコン間の繋ぎは5Ghzに設定でき,そうするとLANでつなぐ場合とくらべても遜色ない.いま現在,この接続でこのブログを書き,送り出しているが,音への影響は認められない.また,iPhoneを5GHzのWiFiで接続すれば,iTunes Remoteで曲を選択し,Devialet Remoteで音量調節が行える.どちらも制御信号をやりとりするだけで,音への影響は認められず,快適である.

ストリーミング処理で,通信経路への環境からの影響がゼロでない以上,どうしてもTime out 現象は避けられない.出来ることは,その確率を小さくすることだけである.その意味で,この障害の完全除去はあり得ないが,現在程度ならば十分満足するべきなのだろう.

先日,D-PremierからDevialet 240へのバージョンアップ注文受付が発表された.WiFiの安定がこれだけ確保されることが分かったので,バージョンアップのメリットをどう考えるべきか,悩ましいところだ.USBないしLANによる有線の接続が出来るようになるが,有線によるアナログ的な音質劣化を嫌ってWiFiを選択したのだから,有線にすることの意味は,理屈の上では考えられない.電源とCPUのパワーアップがあるそうだが,それがどれほどの音質向上につながるのか.不遜なようだが,すでに十分よいので,これ以上よくなる,ということがちょっと想像しにくいのだ.

人は,何らかの意味で向上や進化することに喜びを感じ,モーティべーションをかき立てられる.オーディオ趣味でも全く同様で,少しでも音がよくなった,と感じたときに最大の喜びがある.しかし,雑音や音切れなどの障害もなくなり,音質もこれ以上のものが想像できないとなると,向上,進歩の余地がなくなってしまう.大きな楽しみが奪われ,これはこれで困った問題だ.曲のコレクションなど,別の方向を探ることになるのだろうか.それとも,(昔やったように)すっかり飽きてオーディオから離れるのだろうか.いやはや因果な商売ならぬ趣味だ.

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