Tweaking ー 自分の音探し

簡素化を一段と進めたせいか,音の汚れに敏感になった.私の感性が進化したのかもしれない.そのため,いわゆるtweakingの失敗にも敏感になった.

(1)壁の電源アウトレットと電源ケーブルの接続をより強固にしようと考え,両者のあいだにBlu-Tackをつけてみた.たしかにしっかり接続するが,音が妙ににぶくなる.固有のマイクロフォニック効果(物理的な微振動が起電力となる)が出てしまうようだ.

(2)わた状の絹をケーブルのコネクタの周りに巻くといい,というある評論家の言を試してみたくなり,購入した.アンプに接続した電源ケープルやスピーカケーブルの根元に巻いてみたところ,妙な音の癖が出てしまう.これもマイクロフォニック効果を起こして音を汚す,と感じた.ランダムな構造を持つという絹にも固有振動数があるようだ.


(3)以前このブログで賛辞を送ったΛ3.5をあらためて聞いたところ,どうも音の足取りを重くし,にぶくする感じが否めない.そこで,これは外した.音は清々しくなった.


このほか,すでに書いたものもいろいろあるが,要は,余分なものは使わない方がよいのだ.とはいえ,「少しでも音がよくなるのならなんでも試してみたい」というオーディオマニア特有の意地汚さがあって,誘惑に負けてしまう.その繰り返しである.

逆に,たっぷりある方がよい例として,ミュージックファイルを置くパソコンの計算資源がある.速度と記憶容量である.長時間使用していると,いつの間にか音が荒くなっていることに気がつくことがある.シンフォニーなどでそれが顕著に出る.そこで,アクティビティモニタでシステムメモリを見ると,空き領域が1GBを切っていたりする(実装は16GB).そういう状態では,鮮明さやニュアンスが落ち,音場空間は濁ってしまう.ただちにシステムを再起動すれば見事に回復する.システムメモリの空きが少ない状態では,ページのスワッピングやら何やらで安定したデータ読み出しなどのリアルタイム処理が阻害され,回り回って精密な音の再生が損なわれるのだろう.

説システム Mm では,WiFi信号の強度も重要だ.これが弱いとディジタル的な破局を招き,音切れなどを起こすが,そこに行く前にアナログ的な影響をアンプに与えるようだ.AirMac Expressの置き場所をいろいろ変えてみて,Devialet Airアプリが表示するWiFi Signalの値の変化を見た.どうもアンプに近いほどよいわけではないようで,現在は,正面右コーナーの床上1m位のところに置いている.ここだと,-29dBmから-32dBm位で安定している.他の場所では-50dBm前後になる.しかも(時間や日によって!)大きく変動し,安定しない.電磁場というのはよくわからない.



アンプのマスターとスレーブをつなぐディジタルケーブルが作り出す電磁場の影響も大きい.同軸でシールドもしっかりしているようだし,さらにフェライトコアもつけているが,スピーカケーブルや電源ケーブルに近いと,どうもその影響が音に出てしまうように思われる.これらのケーブルはアンプに接続するためにどうしても近傍に置かざるを得ず,直交させたり,高さを変えたり,といろいろ試しはいるが,困ったものだ.上の写真は現在の拙システムの背面だが,しょっちゅう変えている.黒く太いのが電源ケーブル,白いのがスピーカケーブル,そして黒く細いのがディジタルケーブル(Goldmund製).

Tweakingの評価をどうするか.私は販売者でも評論家でもないから,人の参考に供するための評価をするわけではなく,自分がよければそれでよいのだが,細かい調整の積み重ねがシステムの進化方向を決めてしまうので,その意味でごく私的に重要だ.評価時にはとかく耳に力が入り,細部に聞き耳を立てる,という状態になりがちだが,それではまるで機械のテスターだ.そうではなく,できるだけリラックスして,身体全体で音を感じる.録音技術者,奏者,作曲家の想いが果たして無垢のまま届けられているかどうか,それを無心に聴く.

年をとると高音が聞こえなくなる.物理的生理現象としてはそうかもしれないが,私の経験では年とともにますます(心の)感度がよくなり,よく聞こえる.五味康祐は補聴器を使っていても誰よりも優れた感性で感度よく聞いていたのではないだろうか.音は,理屈やことばを忘れ,自我を無にし,身体全体の感覚細胞を全開して聴くものだ.

Tweakingでは重箱の隅をつつくようなことを繰り返しているが,それを恥じらうことはない.この作業は結局のところ,自分探しならぬ自分の究極の音探しをしているのかもしれないのだから.そしてその音はほかならぬ自己表現なのだ.

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