Devialet AIRとiTunes

手持ちの約600枚のCDすべてをやっとiTunesのデータベースに入れ終えた.1982年から30年にわたって気まぐれに集めたコレクションで,なんら誇るところはないが,自分史を見るようで,一枚一枚につきまとう思い出がよみがえる.D-Premier AIRとHB-1で聞く音はさすがに見事で,CD技術のすばらしさに改めて驚かされる.30年前のものでも古さや劣化が全く感じられない.ソニーとフィリップスはすごい技術を創ったものだ.初期のプレーヤで聞いた音は固くて聞き疲れがしたが,いまはまったくそんなことはない.あくまで透明で彫りが深く,リアルだ.

しかし,せっかくのすぐれた音源データを読み出しアンプに送るソフトウエア(これが現代ファイルオーディオのプレーヤである)に問題がある.音質自体がよいところをみると,バイナリデータの復元と非同期ストリーミングによって正確なタイミングによる正確なバイナリ値の送り出しには特に問題がないと思われるが,以下のような付随的な問題に悩まされた.

(1)ストリーミングソフトであるDevialet AIRは相変わらず「予期しないエラー」が生じてダウンする.MTBF(平均走行時間)は1時間程度.どうも曲の切れ目にダウンする.短いときは数曲で,長くてもせいぜい数時間で落ちる.落ちないまでも音が途切れたり,繰り返されたりする.iTunesは曲ごとに再生回数の属性を付けるが,はじめて再生したにも拘わらず,多くの曲が複数回再生したと記録される.WiFiの電波強度は約-40dBmとなっているので,それほど悪い電波状況ではないと思われるが,アンプ側のパケットのバッファが途切れたり,エラーチェックから再送要求が出されたり,と複雑な状況が起きるのはわかるが,その処理がいまだ不完全で,どうもiTunesとの連繋がうまくいっていないようだ.

(2)iTunes側にも多くの問題がある.MacBookAirの外付けのDVDドライバにCDをいれ,WiFi経由でTime Capsule内のiTunesのデータベースに登録する方式をとったが,この過程でしばしばTime Capsuleがハングアップし,接続が切れてしまうのである.使用しているTime Capsuleにはリセットボタンが無いため,そのたびに電源コンセントを引き抜いて差し込み直さなければならない.ITunesが悪いのかTime Capsuleが悪いのか,あるいはWiFiの帯域のせいか,分からないが,厄介なことである.CD上の曲名リストはきちんと出るので,インターネット上のCDデータベース(Gracenote)とのやりとりには問題はなさそうだ.

(3)iTunesのデータベースは奇妙で,属性値の変更が思うように動かない.たとえば,アルバム名を変更するとなぜかアーティスト名がそれにつれて変わったり,とか,予測をしばしば裏切られる.また,曲を上書きして変更しても,追加日はもとのママである.そのほか,なぜか曲名が誤っていたり(これは1件のみ),一つのアルバムになるべきものが分かれたり,など,結構いろいろな不備がある.「タイトル」と「アルバム」の用語の使い分けもよく分からない.レコーディング日とプリント日は最小限必要な属性データだろうと思うが,欠けている.

(4)最初にAACで入れたものをAIFFに変更できるが,これはどうも無意味なようだ.AACは非可逆圧縮なので,当然だが,ではなんのために「AIFFへ変換する」機能が付いているのだろうか.いくつかのCDで聞き比べてみたが,AAC(とそれをAIFFに変換したもの)の音はどこか暗く,よどんでいて,それに対し,純粋のAIFF版はずっとすっきりとし,透明である.その違いは大きい.メモリがこれだけ安くなり,通信も高速化が進んだので,もはやデータ圧縮の意味が無くなったのではないだろうか.

いろいろけちを付けたが,それにしてもiTunesはよくできている.もう10年以上前になるが,手入力で手持ちCDのデータベースを作ったときの苦労がほろ苦く思い出される.CDを読み込ませるだけで曲名などの属性はもちろん,データのチェックまでしてくれるiTunesは確かにありがたい.それだけに属性の整備などもっと充実して欲しいものだ.

しかし,現在のCDデータベースのように一企業の一システムにまかせてそれに依存するのではなく,全世界の音楽メディア(や映像メディア,それにテキストも)は貴重な人類共通の文化遺産なのだから,それらすべてを網羅するような公的データベースがあってしかるべきかもしれない.しかし,CDを見るとレコード日など必需情報が記されていないものも多く,もともとこの業界でのタグ付け(どうも属性付けをそういうらしい)の規格標準に問題があるのかもしれない.もったいないことだ.

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