Roon 2.0  音が「見える」から「摑める」へ

 ついに出た、Roonのバージョン2.0。

 外面上はRoon 1.8と変わりない。機能上で大きな違いは外出先でもスマホなどで聞くことが出来るようになった、ということ。以前、この機能を要望したことがあるが、じつは今となってはアップルミュージックとiPhoneで十分事足りているし、音質を考えると折角の我がRoonライブラリを聴く気にならない。も一つ望んでいたリッピング機能は加わらなかった。となるとこの跳躍的な筈のバージョンアップにどんな意味があるのだろう。

 ともかく聞いてみよう。音が変わった!この頃の天気予報ではないが、けっして大袈裟ではなく「これまで経験したことのない」と言っていいほど。よりリアルに、より躍動的に、一音一音が生命力を持って自在に3次元音空間を飛び交うのだ。無垢の、つまりなにも纏わず、一切隠さず、生まれたままの素の音を空間に刻み出す。しかも力に充ちて。音が「目に見える」どころか、「手で摑める」かのようなのだ。

 あまりの素晴らしい変わりように、我が耳(と感性)が逆に疑わしくなり、これまで何度聞いたか分からない耳タコの曲を次々、聴きなおしてみる。例えば大貫妙子の「Pure Acoustic」。これほど深くて繊細なニュアンスに富んだ声はまるで別人だ。「聖母マリア夕べの祈り」(下図)ではその典雅な華麗さが新鮮だ。交響曲では、マーラーの9番。手持ちの4アルバム聞き比べたが、録音、演奏の善し悪しがはっきりわかる。大袈裟にいえば、4Kテレビとアナログテレビの違いくらいの差も。


 Roon2.0へのバージョンアップをする前に、システムにいくつかの変更、追加をした。ひとつは、アンプ(Devialet Expert 1000 Pro)にパナソニック USBパワーコンディショナー SH-UPX01を付加したこと。マスターとスレーブ両方のUSB口に取り付けた。音をクリアにする効果が認められる反面、若干色づけ感があるが、総体として気に入っているので付けたままにしている。もひとつ、アマゾンのスマートプラグを使って、プレイする時間はパソコン(Roonサーバ用とコントロール用の二つのMacBook Air)の電源ラインをオフにし、バッテリ駆動状態になるよう設定したこと。この効果は大きい。実際、Roon2.0にしてからこれをオンオフして試して見ると、その効果がよりはっきり判る。極めて薄いベールを拭いとるような効果である。いずれもディジタル処理が発生する数MHzの高周波ノイズを除去するのだろう、と考えるが、客観的根拠はない。

 しかし、なぜRoonのバージョンアップでかくも音が変わるのか。外見上ではどこが変わったのか判らない。しかし、Apple Silicon向けのネイティブコーディングが出来るようになったのでそれを利用した、との記述がRoonのページにある。これで処理が高速、最適化することは確かだろう。さらに憶測すれば、それを機会にコード自体に手を入れ改善したのではないか。しかし、音信号を扱うRoonの処理といえば、ストレージからメモリへの読み出し、バイナリデータのフォーマット変換、LAN経由でのオーディオ装置とのデータのやりとり、だけである。私は、DSPは使わないようにしているから、この関与はないはず。音のデータをいじらず、フォーマット処理の高速化だけで音が良くなるとは?しかもかくも見事に。

 いずれにせよ、ミュージックデータをDACに届ける過程をより高速化するだけでこれほどの効果が認められるのは、DAC以降のアンプとスピーカにそれに応える能力があればこそで、DEP 1000と Sonus Faber Searfinoの持つ潜在能力の高さを改めて認識した。我がμJPS にはまだまだ伸びしろがある?

 しかし、Roonの高速化による副作用だろうか。これまで経験したことのない(^_^) メモリリークが起きるようになった。これまで不精をして、Roonサーバは流しっぱなしで終了しなかった。すると、バージョンアップ後、3日目くらいから演奏の(瞬断でなく)中断が起こるようになった。面倒だからそのまま翌日も、その翌日も使っていると、次第に中断の頻度が増え、ついには止まったままになった、これには慌てた。

 以前からRoonにメモリリークがあるらしいという話はネットで見かけていた。さては我が家のものにも、と思い、改めてネットで見直すと、この中断現象はそれが原因らしい、と考えるようになった。以降、演奏を終えたらRoonサーバを、お行儀良く終了するようにしている。それからは中断現象は起きていない。因みにメモリ使用量は1.5GB位で、特に急速に増殖する現象のエビデンスは見ていない。

 と思っていたら、先ほどRoonで音楽をかけたまま小一時間ほど外出し、家に戻ってしばらくしたら、プレイが止まってしまった。メモリ使用を見ると、3.78GB。一旦終了し再スタートするとOK 。メモリは1.2GB。長時間使用によるメモリリークが生じた、かも知れない。(しかし、いまこれを書くのに使っているMacBook Air 2019では、実装メモリはMacBoook Air 2020の半分の8GBであるにも拘わらず、Go for Gmailアプリの使用メモリがなんと8.23GBだ。こちらでは異常現象は起きたためしがない。それを考えればRoon2.0の使用メモリがそれほど異常とも思えない。ということで、よくわからない、というのが本音)。

 メモリーリークだとしたらなんとも古めかしいバグ、郷愁さえ感じた。Roonのバージョンアップによる副作用ならばはやく修正して欲しい。AIはめざましく急速に進展しつつあるのに、古典的なソフトウェア工学に進歩はないのだろうか。

 

コメント

人気の投稿