Devialet Expert 1000 Proが機能不全に

  昨年10月、心不全で手術を受けたが、ありがたいことに三週間の入院で快癒した。帰宅後、お預けになっていた我がオーディオの妙なる音とRoonの卓越したUXを楽しむこと数日、なんと突然Roonでの再生が出来なくなった。自分流でいろいろ対策を講じてみた。しかし、今回は、思いつく限りの対策が通用しない。最終的に復旧するまでに3ヶ月も掛かってしまった。心臓の病いに比べればたかがオーディオの故障だが、このまま元に戻らなくなったらどうしようと、不安な日々をすごした。なぜこんなことになってしまったのか。そしてどのようにこの災難を乗り切ったか。再び同じ目に遭わないよう、反省を含めて記録しておきたいと思う。

 退院が11月5日。翌日から我がシステム μJPS を聞き続けた。3日後、入力をテレビの音声からEtherに切り替えたところ、音が出ない。パソコンのRoonのSetting → Audioのページを見ると、ネット接続機器の一つとしてそれまでは当然のように表示されたExpert RAATの表示がない。MacBook AirとDevialet Expert 1000 Pro(DEP1000)の物理的LAN接続を確認する。どちらもコネクタのLEDランプが点滅して正常だ。ということは、DEP1000がRoon RAATのプロトコルで認識されない、つまり論理的接続が出来ていないということである。テレビの音声出力をOPT1に接続しているが、これは正常に機能している。USB他の入力は一切接続していないので試すことは出来ないが、今後も利用する気はないので、思考対象外である。正常に機能していた前日からこの時点までにソフトウェアの更新や各種設定の変更は一切していない。Roonは頻繁にbuildの更新を行うが、自動でされることはないから以前のままのはずである。また、DEP1000のソフトはファームウェア(FW)で、これこそこちらが主体的にアップデートしない限り、変更されることはないはずである。こういうときの常套手段として、パソコン、アンプ、さらにはルータの再起動を試みるが、変わらず。ともかく思いつく限りの試行をしたが、だめだった。

 思いあまってDevialet社 ウェブサイトの「問いあわせ」にメールを出した。2011年のDevialet Premier 購入以来、何度かDevialet社の「問いあわせ」(Customer Service and Suppor)とのやりとりを経験している。

 日本語で送ったところ、日本人女性名からの応答があった。この人をJさんと呼ぶことにする。まずこちらの状況を知ってもらうことに一苦労した。Jさんが技術に詳しくないのは仕方ないことで、何回かのやりとりの後、Jさんが「エンジニア」と呼ぶ人(Eさんとするが、多分複数)が英語で対応することになった。ところがその対応がなんだか奇妙で噛み合わない。Expert Proのことをあまりご存じないようなのだ。しかし、やりとりでまず分かったことは私のアンプ DEP1000 のFW(ファームウェア)が最新版でない、ということ。FWが関係しているかも知れない、と疑ってはいたので、これを最新版にすれば修復できるかも知れない、と希望が湧いた。

 しかし、FWをバージョンアップすれば、Configurationの設定はどうなるのか。ここでまた一悶着。相手が正しくこちらの疑問を理解してくれず、議論がすれ違う。ともかく指示通りにFWをバージョンアップしたところ、肝心のRoon問題は解消されないどころか、これまで無事だったテレビ音声出力のOPT1まで機能しなくなってしまった。完全機能不全である。もとの状態に戻そうにも方法がわからない。Eさんらはいろいろ指示をしてくるが、従っていると、ますます悪くなる一方だ。

 ほとんど毎日のようにメールのやりとりを繰り返したが、ついに年末年始の長期休暇前になり、フランス本国の工房で「点検」したいがどうか、という提案がなされた。それが最上策だと思い、了解した。そして年越し。

 正月明けになっても何の連絡もないので催促メールをしたところ、1月6日の英文メールで、UPSに依頼したから、そちらから届くメールの指示に従って出荷して欲しいとのこと。UPSのサイトからラベルをダウンロードし、集荷依頼をする。UPSのサイトもあまり出来がよくなく、一苦労したが、なんとか1月24日には、深圳などを経由してDevialet社工房に到着。2019年のハードウェアグレードアップでは工房の作業は丸二日で済んだので、その程度かと期待していたが、今回は2週間掛かった。しかし、UPSによる帰路は高速で、ローカルの宅配を含めたった三日で、無事到着した。

 そもそも今回のトラブルの大本は何だろうか。

 確かにDevialet社の2020年10月6日のRELEASE NOTES にFWのバージョンアップについての記述があり、その理由の一つとして、

   Other bug fixes and improvements related to Roon Ready usage over Gigabit Ethernet.

とある。この通知を知らせるメールもDevialet社から届いていた。しかし、アンプは正常に機能していたので、迂闊にもFWのバグ修正の件を軽視し、バージョンアップを見送った。実際その状態で昨年11月初めまで問題なく稼働していたのだ。しかし、2020年12月にはRoon CoreとしてM1 MacBook Airに変更した。昨年6月9日にインターネット回線をNTTからニューロ光に換え、それに従ってルータをニューロ光のONU F660Aへ変更した。また、9月15日、LANケーブルをエレコム LD-OCTT/BM20 (CAT8)に変更した。いずれもLAN伝送のより高速化を可能としていて、その結果、Roon RAATプロトコルで以前には適用されなかった高速のGigabit Ethernetが適用されるようになり、それで旧バージョンのFWのバグに遭遇した?正確なところは分からない。

 いずれにせよ、FWは最新版にバージョンアップし、その上でDual Monoとしてのconfigurationを以前の通りに設定することにした。機種として Expert 1000 Pro dualを選択しただけで、その意味でデフォルトの設定である(なお、ウェブサイトの日本語版で、下図のページに行く見出しが「高度な設定」となっているが、英語版を見ると Expert Setting なので Expert機種の設定に懸けているのだろう。このような意足らずの翻訳が日本語版には結構あり、理解を妨げた)。SAM設定は使っていない(SAMが気に入らないのは私だけではないようだ。こちら参照)。




 工房の「点検」で、その結果と考察などの報告があるものと思っていたら、それはサービスには含まれない、とのご回答。なにか修理したのかどうかさえ分からない。ともあれ、帰ってきたアンプにスピーカ、LANケーブル、テレビの音声出力を接続し、電源をいれた。最初はFactory Configの表示。つまり工場出荷時の初期状態である。Dual Monoの結線をしているので、この状態で正常な音は出ない。次に、サイトからダウンロードしたConfig FileをいれたSDカードを左右それぞれアンプに読み込ませる。すべて順調に進み、MacBook Air の Roon にいれた楽音が、何事もなかったかのようにスピーカから流れた。3ヶ月ぶりである。Devialet社はギリギリのところで誠意ある対応をしてくれた(全て無料である)。それにしてもメールのやりとりで対応されたエンジニアのEさん、もうすこし謙虚に自社のアンプとウェブサイトについて勉強していれば、せいぜい長くて一週間で問題解決できただろうに、と思う。要は、FWのバージョンアップとConfiguration設定手順の問題だったのだから。

 なお、相談窓口とのメールのやりとりは、今回に限らず、これまでのものすべてDevialet社サイトのHelpのマイアカウントで見ることが出来た。データベース化されているのだ。同様のトラブルに見舞われたユーザに対し、より適切で迅速な対処が出来るよう、社内でこそ活用してほしい。

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