ちょっとした工夫

少しでも良い音を引き出したい,聴いてみたい.そんな利己的,末梢的欲望は,どこか恥ずべきものと思いつつも,生きるエネルギー源のひとつになっている.

拙システム Mm はこのところすっかり安定し,これ以上どうすればそのレベルを上げられるのか,思いつくところがなくなってきた.そうこうしているうちに,MacBook Pro Retinaに格納するミュージックデータが単調増大を続け,ついに750GBの内蔵SSD(フラッシュストレージ)の限界に近づいてしまい,これ以上ソフトが追加できなくなってきた.さてどうするか.

NASを追加するのが一番手っ取り早い.しかし,以前テストしたところ,NASからの音は内蔵SSDに比べ劣化すると感じた.感じるかどうかはともかく,データの処理過程がその分長くなるから,悪くなりこそすれ,決して良くはならないはず.ピュア・オーディオニスト(私の造語です.悪しからず)としてはとりたくない方法だ.

ではマックを買い換えるか.これからもソフトは増え続けるはずだから,せめて2TBのSSDを内蔵するものがほしい.しかし,いまのところそういうマックはない(HDDまたはそれを使ったFusion Driveならば3TBまであるが,HDDの音質に与える影響がやはり気になり,使う気になれない).

そこで,次善策というか,当面のしのぎ策として,フラッシュメモリであるSDカードを使うことにした.MacBookPro Retinaに256GBのSDカードを入れ,そこにiTunesライブラリを入れて試したところ,内蔵SSDからの音との差は感じられない.とりあえずこの方法で対処し,2TB以上SSD内蔵のマックの出現を待つことにした.SDカードは寿命が心配だが,なにせ入れるデータがミュージックデータのみなので,書き直しはほとんどないし,また,しばらくの繋ぎとして使うつもりなので,気にしないことにした.

買い換えるとして,機種はなにがよいか.やはりノートブック型がいいと思う.そのポータブル性ゆえではなく,電池を電源に出来るからだ.じっさい,電池モード(電源ケーブルを外した状態)と交流電源モード(電源ケーブルを接続した状態)とで比較すると,音質にかなり明瞭な違いがあり,電池モードに軍配が上がる.交流電源モードでの音の妙な堅さが取れ,より純粋に聞こえるのだ.これまで,何人かの友人にも試聴してもらったが,期せずして同意見だった.確かな理由はわからないが,パソコンの電源ケーブルを流れる電流の変動が,アンプ以降のオーディオシステムになんらかのアナログ的影響を与えるのだろう.

さて,その電池モードだが,そうするには電源ケーブルを外さなければならない.ところが音楽を聴くとき,それをしばしば忘れ,知らずに水準の低い音を聞いて過ごし,気づいて後悔したり,逆に,電池モードのままで充電することを忘れ,パソコンの動作がおかしくなって慌てたりした.

そこで思いついたのが,タイマー付きの電源タップを使うこと.電器店をぶらついていて見かけたものだ.さっそくこれを試してみた.私の現在の習性では,オーディオを聴くのはほとんど午後の6時間の間なので,その間,電源ケーブルの接続をオフにする設定にした.これはなかなか快適だ.一段と Mm の音が楽しめるものとなった.大きな音質改善である.

いま,Heifetz演奏でBruchのScottish Fantasyを聴いている.1947年録音だ.Heifetz特有の甘美さがなんとも切なく,胸に迫ってくる.こういう音を聞くと,ハイレゾやDSDなどどれほどの意義があるのだろうか,と思わず疑ってしまう.

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