これは効いた

Less Is Moreのモットーのもと,必須でないオーディオアクセサリはできるだけ使わないことにしている.使うにしても,厳しく吟味する.最低で2週間,ときに数ヶ月聞き続けて評価する.評価はそれの有り無しでの比較になるから,取り外しやすくもとの状態に戻せるものがよい(それが出来なくて,語るに落ちる失敗を何度もしている).

今月の初め,Kiso Acoustics社の静CNC20-200を入れてみたところ,これがよく効く.取り外しが簡単なので,有りなしの違いによる評価がしやすい.ただし,宣伝の写真にあるようにスピーカケーブルに取り付けたのではない.最初そのようにしたところ,かえって音が悪くなり,騒がしく濁ったような感じになった.音やスピーカが与える微振動に共振し,スピーカケーブルにマイクロフォン効果を起こすのではないだろうか.これはだめだと思い,アンプの電源ケーブル(Transparent PLMM2)に付け直した.途端に音が澄み渡り,奥行きを増し,響きが広がった.拙システムではこれまで何度か進化の階段を上がった,という感じを持ったことがあるが,それに匹敵する.気をよくして追加購入し,左右アンプをつなぐディジタルケーブルの両端にも付加したが,わずかながらもその効果が認められた.こうして一月近くたつが,このアクセサリの効き目は確信できる.これまで再生が難しく敬遠していたオーケストラや合唱の曲にもその効果がよく現れ,実に鮮明で生々しい音響空間を作り出す.本当に久しぶりにVerdiのAidaを聴き通すことが出来た.ボリュームを相当上げても混濁感,圧迫感,不快感が生じない.心地よすぎてうたた寝に陥ったこともある.

CNC20はカーボンマイクロコイル(CMC)を使っているという.Kiso Acousticsのサイトでは電磁波を遮断する効果を強調しているように読めるが,私はどうも違うのではないかと思う.電磁波がスピーカケーブルの電流やまして電源ケーブルの電流に強く影響するとはとても考えられない.むしろ,このブログで以前指摘したケーブル間の磁場結合問題に対処するもので,電源ケーブルの電流が起こす磁場を遮断する力があるからではないだろうか.CMCの解説記事に詳しくその特性が述べられているが,やはり電磁波特性が強調されていて磁場遮断特性についてはあまり述べられていない.いずれにせよ,本当の理由ははっきりしないが,効果があることは確かで,アンプの背後に集まりやすいケーブル間の相互干渉がいかに音を劣化させるか,その証左にはなっているかと思う.私にとって,WiFi使用によってケーブルを減らす最大の理由もそこにある.

現在の拙システムの様子を下に示す.CNC20-200はアンプ(Devialet D-Premier Air x 2)の後ろに微かに見える黒いもの.右手の飾り置き台の中段にWiFiルータ(Time Capsule)が置いてある.Time Capsuleに内蔵された1TのHDDにはこれまでリッピングあるいはダウンロードした曲のすべてを納めているが,ただのデータ倉庫で,オンラインでは,つまりいわゆるNASとしては使用しない.そこの曲を選択しプレイするとそのデータがパソコンにストリーミング転送されるため,LANを輻輳させ,音の劣化につながることがわかったからである.さらに右手奥の暗いところが和室で,ここにMacBook Pro Retinaがあり,iTunesの画面が見える.このMacが持つSSD上の曲をもっぱらプレイする.MacとTime CapsuleはWiFiでなくLANケーブル(青色)で接続している.Time Capsuleとアンプの間がWiFi接続.アンプが受ける電波強度はほぼ-37dBm程度である.スピーカセッティングは以前記した白銀比ベースのものから変えていない.


この写真はSONYのディジタルカメラRX1Rで撮影した.このブログで以前 iPhone5 で撮影したものとの違いがわかるだろうか.大きなモニタ画面で見るとその差は歴然である.対象の質感描写がまるで違う.最近の4Kテレビでは,左右視差を使わなくとも3次元感覚が得られるように,優れた解像度を持つ写真は視差情報を与えずとも自然な立体感を作り出す.オーディオでもまったく同じことがいえる.いまの拙システムの音がこのRX1Rの写真に対応するとすると,以前のシステムの音はスマホ撮影の写真というべきか.微妙と言えば微妙だが,まさに同様の立体感,緻密感,存在感の違いが感じられる.そういえば,先日発表されたiOS7の画面も視差を使わずにボケだけで品のよい美しい立体感を出している.さすがだ.

先日,N響の演奏会に久しぶりに出かけた.もちろん狙いは生音を聴くことである.さて,拙システムの音との比較は? 当然,記憶頼みだが,我がシステムの音は生音に対しけっして遜色ないのではないか,というすこしばかり不遜な感想を持った.帰宅後,持ち帰った記憶とあらためて比較しても,たしかにその感がする.オーディオの音は生の音とは別物,という一種の言い訳がされることがあるが,今のオーディオ技術ではもはやそんなことはないのではないだろうか.聴いた席が後方だったため,舞台の上のオーケストラが小さく見え,左右スピーカの間隔とほぼ同じ視角(聴角?)に感じられたせいかもしれない.しかし,複雑な音の溶け合いや実体感,さらにスケール感など,記憶で比較する限り,拙システムの音はすでに生とほぼ変わりないとさえ思える.むしろ,日頃オーディオで聴いているCD録音の超一流演奏と比較してしまうためか,N響演奏に物足りなさと歯がゆさを覚え,そのほうがずっと気になってしまった.たとえばブラ1で,ブラームスのどこか悲痛な情念がオーディオでは痛いくらいに心に響くのだが,今回の演奏ではいまひとつ物足りず,どこか人ごとのようなのだ.

このアクセサリによってステップアップしたからこそ生演奏により近づく音作りが出来たと言っていいと思うが,この喜びもしばらく続くと,それが当たり前になってしまい,不感症になる.アクセサリによっては厚化粧のようにかえって鼻につくようになることがある.その場合には思い切って取り外し,もとの清楚さに戻す.しかし,今回はそういうことはなさそうだ,たぶん.

CMCの効果で,パソコンの状態の音への影響がさらに鮮明に現れるようになった.数時間プレーを続けると音がなんとなく毛羽たつというか,煤けるというか,汚れた感じになるが,パソコンとアンプの状態を初期化(再起動)すると,この汚れが見事にとれ,生まれ変わる.

テレビのBSで,サブチャネルを別放送にしたところ,主チャネルをみていた視聴者から画像が汚くなったというクレームが多く寄せられたという.私もそれをたまたま見ていたのだが,言われて見えればそうかな,という程度だった.ビットワイズの情報としては全く同じはずなのに,なぜその違いが感じられるのか,理由はよくわからない.品質に対してあまりうるさく問わない一般のひとでさえ,それくらい鋭敏な感覚を持つのだから,ディジタルオーディオで情報供給の安定度のわずかな違いが音に影響し,それを人が鋭敏に感知することはおおいにあり得ることなのだ.

なお,Devialet AIR関係のバグについて...いまだ未解決のママで,あいかわらず音飛びや音重なり(グジュグジュという感じ)が数日に何度かという頻度で起こる.まれに,突然Wifiが切れてしまうこともある.アンプのソフトウェアを再起動すれば正常に戻るので強い不満にはならないせいか,ネット上でもあまり話題にならなくなっている.ただし,Devialet社はほおかむりしてやり過ごすつもりはないようで,WiFiチップのメーカを含め検討を続けているという情報もある.ごくまれに確率的に起こるというたちの悪いバグだが,あきらめて放り出してしまうことだけはしないでほしい.

iTunesは11.1にバージョンアップしたが,良くも悪くもその影響はいまのところ見られない.おそら音情報処理関連モジュールに変更はなかったのだろう.

Audirvana Plusも試してみた.いろいろと設定パラメータを変えてみたが,効果のほどは,拙システム(と私の耳)ではわからない.すこし濃い味がするかな,といった程度である.数年前と違ってCoreAudioの音情報処理モジュールが進化しているため,いまは互いにそれほど違いがないのだろう.

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